【薄氷の殺人】の無料動画がみれる配信サービスは？

中国の地方都市で起きた連続殺人事件を追う刑事と、その容疑者とされる女の物語。

バラバラの遺体が発見され、その事件を追う刑事ジャン（リャオ・ファン）は、被害者の弟に話を聞こうとしますが、弟とその仲間は逃げようとし拳銃を発砲。ジャンも応戦するが撃たれてしまいます。
仲間の刑事達は全員殺され、ジャンも大けがをし、刑事の第一線から外れ、警備の仕事をするようになります。

時は流れ、警備員としての仕事に意義を見出せないジャンは酒に溺れた日々を過ごします。
奥さんとはすでに離婚済。

再びバラバラ殺人が発生し、その被害者がすべて、ジャンが銃で撃たれた事件の被害者の妻、ウー・ジージェン（グイ・ルンメイ）と関係のある男ということを知り、ジャンはウー・ジージェンを独自に調査しはじめます。

ウー・ジージェンとその周辺を調査するうちに、ジャンは真犯人が最初の事件で被害者とされたウー・ジージェンの夫であることを突き止めます。
ウー・ジージェンの夫は、自分が殺した相手と入れ替わり、自分が殺されたことにして、妻であるウー・ジージェンを見守って過ごしてきました。ウー・ジージェンと仲良くなる男を次々と殺しながら。
そんな生活に疲れていたウー・ジージェンは、ジャンに心を許します。
ウー・ジージェンの夫は警察に追われ、射殺されてしまいます。夫の呪縛から解放されたウー・ジージェンでしたが、事件の真相は他にありました。
クリーニング屋で働くウー・ジージェンが客の服をダメにしてしまい、客の男に弁償するか身体で払えと迫られたことで、その男殺してしまいました。夫はその身代わりになったのです。
真相を掴んだジャンはウー・ジージェンに本当のことを話すように伝え、ウー・ジージェンはジャンに身を委ねます。
ウー・ジージェンは警察に逮捕され、警備員として干されていたジャンはこの事件解決によって警察から評価されます。

これが薄氷の殺人の主なストーリーです。

主演男優のリャオ・ファンと主演女優のグイ・ルンメイが素晴らしいです。リャオ・ファンはベルリン国際映画祭で主演男優賞を受賞していますけど、納得の演技です。
そして、中国地方都市を描いた幻想的な夜のネオンも素晴らしいです。

映像も俳優もいいんですけど、いまいちストーリーが伝わりにくいかなって印象です。
刑事が容疑者の女に抱いた感情がとっても難しいし、容疑者の女が刑事に抱いた感情も難しいです。単に恋だの、救いたいだのといったわかりやすい感情では計り知れない感情です。その理解しにくい感情の発露がこの映画の魅力かもしれませんけどね。

女の感情としては、日陰での暮らしに疲れ果てて、誰かに解放してもらいたかったけど、今まで救いを求めた相手は夫に殺されてきた。この刑事なら……という期待を抱いたのかもしれません。

わかりにくいのは刑事側の感情です。彼女に惚れて興味があるのかと思いきや、ただ怪しいなと思った女に付きまとい、実際にそこを突破口として事件を解決しただけのようにも見えます。だとしたらラスト観覧車でのセックスはどういう感情なのか疑問です。捜査のために彼女の拠り所とする気持ちを利用した鬼畜なのか？それとも？と、どちらとも判別できません。

利用されていることをわかった上で、彼女は過去の呪縛から解き放ってくれる誰かが必要だったのかもしれません。
ラストの彼女が実況見分するシーンでは、昼間から誰が上げているのかわからない花火が空を舞います。この映画の原題でもある白日焰火（白昼の花火）を見ながら穏やかな表情を浮かべる彼女を見ていると、何もかもわかっていながら、身を委ね、そして救われたと感じているようにも思えます。

一筋縄ではいかない複雑な感情を喚起してくれる登場人物達が素晴らしい作品です。サスペンスものでこういった感情の描き方をしている作品はあまりないような気がします。逆に感情がわかりにくいから馴染めないって人もいると思いますけどね。

音楽の使い方も独特で面白いんです。
ラストの曲が日本でも90年代に流行ったような四つ打ちのダンサブルな女性ボーカル歌謡なんですけど、しっとりとした白昼の花火の余韻をぶった切るエンドロールになっています。何とも唐突で、ラストシーンとのギャップが凄すぎて非常に違和感を感じる選曲なんです。

歌詞が中国語？で意味がわからないんですけど、歌詞の意味を知れば納得できるものなんでしょうかね？だとしてあのラストであの曲を持ってくる感覚はとても不思議。面白かったんですけどね。
独特の感性で魅せる他にはない作品であることは間違いないので是非チェックしてみてください。