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登場人物それぞれの心の描き方が秀逸

主人公のスティーヴィーは13歳の少年。兄のイアンが聴く音楽やファッションといったカルチャーに憧れがあるものの、兄には認めてもらえず、そういったことを語る友だちもおらず悶々とした日々を過ごしている。母子家庭で家族間のコミュニケーションは取れていない。兄のイアンは事あるごとにスティーヴィーに対して暴力を振るっていた。

スティーヴィーは、街で見かけるスケーターの少年達に憧れを抱き、積極的に近付き仲良くなることに成功。自分の居場所を見つけ有頂天になる。

スケーターの少年達もそれぞれの人生に問題を抱えながら生きている。

スティーヴィーが入るまで一番下っ端だったルーベンは母親から虐待を受けており家に帰りたくない。スティーヴィーに色々と教えてあげたり面倒をみるルーベンだったが、スティーヴィーが仲間内で自分よりも信頼を勝ち得ていく様を見て、スティーヴィーに対して嫉妬や敵意を抱くようになる。

スティーヴィーはスティーヴィーで最初お世話になったんだから、しっかりルーベンを立てておけばいいのに、調子に乗ってルーベンに対してナメた態度をとるようになる。この辺の対応はまさに青春時代アルアル。最初面倒見てくれた先輩が、仲良くなって内情を知るようになると自分よりも下に感じてナメた態度をとるようになる。痛いほどよくわかる現象なんだけど、大人になった身としてはそこはしっかり礼儀を尽くせと言いたくなる（笑）

仲間のムービーを撮る無口なフォース・グレード。

そして、ひたすら何も考えずにパーティー・ドラッグ三昧で遊んでいたい金持ちの息子ファックシットと、スケボーでプロになって貧困から抜け出したいレイ。最初は楽しい時間を共有できるスケボー仲間だったが、成長するにつれて将来へのビジョンが違ってくる。お互いにそのズレに何となく気付いているが、それを言葉に出来ずに惰性で一緒にいる。

少年達の仲間に入ったことでスティーヴィーは変わり、少年達も少しずつ変わっていきラストへと向かう。

スティーヴィーが変わったことで、家族の関係も変わっていく。若くしてイアンとスティーヴィーを生み、女手一つで2人の息子を育てる母親は、今はましになったものの、昔は女としての人生を捨てきれず男との生活に溺れていた。そういった母親を目の当たりにすることで兄イアンの心は抑圧され、そのストレス発散の矛先は弟スティーヴィーに向いていた。

スケーターの仲間を手に入れ、自分の居場所を見つけ、思春期特有の万能感を手に入れたスティーヴィーは、今まで言いなりで暴力を受けていた兄イアンに対して反抗するようになる。暴力で屈しなくなったスティーヴィーによって自分の弱さや鬱屈した心と向き合うことになったイアンは号泣。自分の心と向き合ったことでスティーヴィーに優しくできるようになる。

「10代の頃にもう子供の世話をしなきゃいけない人生なんて信じられる？」と、自分の人生を子供に押し付け、子供達を自分の思い通りにさせてきた母親は、スティーヴィーに対して再三仲間達とは遊ばないようにと伝えるも、最後にはスティーヴィーや少年達の気持ちを汲んで接するようになる。

個人的に、心情の描き方が一番秀逸と感じたのが兄イアン。父親のいない家庭の長男。甘えられる大人はおらず、身体を鍛え、音楽やファッションなど、わかっている男になるべく精進するもそれを共有できるような友達もいない。自分の弱さや甘えを曝け出すこともできず、かといって自分のアイデンティティーを確立させることもできない。抑圧された心は弱い者（弟）への暴力という形で現れる。弟が自分の支配下にいなくなったことで、自分の弱さと向き合うことになりそれをしっかりと受け止める。抑圧された心による暴力性がなくなり、怪我した弟を看病するなど本来の気性であろう優しい心が見えてくる。今までは姿は、複雑な家庭のせいで長男としての責任や自負で自分を追い込んで迷走していただけなんだと思えてくる。

ラストは青春映画ならでは、祭りが終わった的な寂寥感漂う流れだが、フォース・グレードの撮影したムービーが流れることでキラキラとした青春のポジティブなバイブスで終わりを迎えるので観後感が心地良い。