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妹が両親を道連れに自殺してしまい、家族を失った主人公のダニー（フローレンス・ピュー）。
心が不安定なダニーを想い、恋人のクリスチャン（ジャック・レイナー）は、友人と計画していたスウェーデン旅行にダニーを誘います。友人のひとりでスウェーデンからの交換留学生ペレ（ウィリアム・ジャクソン・ハーパー）の地元の村で行われる90年に一度の秘祭に、ダニー、クリスチャンを含む5人で行くところから物語が始まります。

その秘祭は日が沈まない白夜の季節に行われます。牧歌的な雰囲気と、優しい人々。ダニーの気分も晴れると思いきや、徐々に怪しい雰囲気になっていきます。

秘祭の内容が徐々に明らかになっていくにつれて、その村の狂気が見えてきて、まずは5人と同じようにロンドンから遊びに来ていたカップルがいなくなり、その後5人の仲間が徐々に失踪していきます。あきらかに村人に殺されていく流れ。

秘祭の内容は、神に生贄を捧げるというもので、招かれた人々は生贄として連れてこられたのでした。村人たちの言い分としては、死は自然の輪廻の中に入るということで、恐いものではなくむしろ光栄かつ崇高なもの。村人たちの中からも生贄が選ばれます。

秘祭の中で女王が選ばれ、最終的に生贄を選ぶんですけど、女王を選ぶダンスでダニーが勝ち残り女王になります。恋人のクリスチャンは村の女に見初められ、変な薬を飲まされた状態でその女に子供を宿すためにセックスすることになります。クリスチャンの愛情に疑問を持っていたダニーは、クリスチャンのセックスシーンを目撃したことで、最後の生贄のひとりにクリスチャンを選び、クリスチャンを含む9人の生贄たちが燃やされ、ずっと苦悶の表情を浮かべていたダニーが笑みを浮かべたところで映画が終了。

バッドトリップムービーという名が相応しい演出のオンパレード。映像はもちろん、演出も常に不穏な空気をまとっていて観る者を不安にさせます。実際に登場人物達はひたすらドラッグやってますしね。村について早々マジックマッシュ。その後も訳の分からない液体だのを飲まされ続けます。

妹と家族を失った主人公ダニーがあの秘祭に行った意味がほとんど見いだせないまま映画は終わります。前半の流れを踏まえると、妹と家族の死を受け止めきれずにいるダニーが秘祭に参加することで何かしら救済されるんであろうと思っていたのでかなり不完全燃焼。自分を裏切った恋人と共に生贄たちを燃やしたことで儀式も無事完了。そんでもって気分もすっきり笑顔？なんじゃそりゃ？って感じでした。

なぜ精神的に不安定な妹は両親を道連れに死を選んだのか？

前半繰り返し、ダニーが家族の死を受け止めきれず悶々とする様を見せられるので、何かしらこの答えが提示されるはずと観客は考えるはずです。
「死ぬことで運命の輪の中に入り、すべてと調和し再び巡る。」という秘祭の教義を知ったことで、両親という生贄と共に死を選んだ妹たちは幸福な調和の中に入ったとでも言いたいのかな？

いやいや、自ら望んでそうしている人はいいけど、無理矢理殺されているわけですからね。その人にとっては無念でしかないわけですよ。そんなことも理解出来ずに、これでみんな幸せになったわね。って解釈であのラストの笑顔だとしたらダニーは頭おかしいし狂ってます。序盤からダニーは不安定な奴という設定で話は進みますけど、これじゃあホントにただのおかしい奴でしょう。

村の信仰内容も深堀りされることはなく雰囲気だけ。いまいち納得できないし、感情移入もできないまま終わります。死を恐れず、死は宇宙・自然の輪の中に加わる崇高なものと信じている信仰だとしたら、まずは信じている自分たちが生贄になれよと。人が減るから定期的に外部から招き入れる必要があることは理解できますが、それならば生贄ではなく共に信仰してくれる仲間を増やしなさいよと。信仰を伝えて、同じように信仰し残ってくれる者を探すようにしろよと。世界中には色んな信仰を持つ人がいるので、考えに共感し村での生活を共にしてくれる人は少なからずいるはずですから。

【ホラー映画に必要な設定を用意された村】としか思えずまったくリアリティーがありません。

自分たちの勝手な信仰のために生贄になる人をおびき寄せて喜んでいるキチガイ村に迷い込んでしまった哀れな旅行者の物語。

残念ながらただただそれだけの映画です。ホラー映画という意味ではそれだけで十分成立する物語ではありますが、家族の死を乗り越えようとする主人公の思いはまったく意味のないものとなっています。妹と両親が死んだ話いります？それがあったおかげでハードルが上がりましたよ。自ら死を選び、妹と一緒に死んでしまった両親たちは本当は救われたのかも。観ているこっちもそう思えるようなカタルシスが欲しかったけど、これじゃあ無理ですよ。生命の輪の中に入るのはいいけども、望んだ者たちだけでどうぞとしか思えません。

深い話に見せようとしてまったく描き切れていない一番残念なパターン。これだったら変に雰囲気を持たせずに、お気楽大学生たちが狂気の村に迷い込んだってだけのホラー映画の方が何倍も楽しめたはずです。

あと、彼氏はどちらかと言えば普通にいい奴ですよね？友だちと論文の件でイザコザがあったりはしますけど、傷心の彼女を男友達だけの旅行に誘ったり。友達もいい奴揃いですよ。本当は男達だけでの旅行を楽しみたかったのに嫌々ながらもそれを受け入れてますし。

彼氏のクリスチャンが村の女の子とセックスしてダニーを裏切ったから殺されちゃうってラスト。これでスッキリした人っています？だって、クリスチャンもやりたくてやったわけじゃないでしょあれ。変な薬を飲まされて抵抗出来ないような状況でヤラされてるんですよ。逆に女の人が薬飲まされてあんな雰囲気の中で抵抗する気も起きないような状況だったらどう感じます？

悪いのはすべてあの村の連中で、人さらいの役だった裏切り者のペレですよ。

あの終わり方じゃ、主人公のダニーもヤベー女ってだけで、何の感情移入もできませんし、クリスチャンも優しさに欠けるところはありましたけど、ダニーだって彼氏に気を遣い過ぎて逆に迷惑かけている部分が多々ありましたからどっちもどっちでしょ。

罪なき大学生たちが人殺し村に連れて凝られて惨殺されるお話。ただそれだけの映画でした。それだけの映画として観る分には悪くないでしょう。ただし、秘祭から伝わってくるカルト感も雰囲気だけ。かなりステレオタイプなカルト像なのでもう一ひねり欲しいなってのが本音ですけど。

期待して観ちゃった分だけ残念度が高かったんですけど、みなさんいかがでしたでしょうか？
おまえは全然わかっていない。この物語はこうだ！って解釈等ございましたら教えてもらえるとわたしも救われますw