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エドワード・ノートン演じるFBI捜査官ウィル・グレアムが、自身が逮捕したレクター博士の協力and妨害を受けながらも連続殺人事件の犯人を追うシリーズ第三弾。

幼少期の虐待によって、レッドドラゴンという神にとりつかれ、自身を神へと脱却すべく、連続殺人を続けるレイフ・ファインズ演じるビデオ加工技師フランシス・ダラハイドが犯人。エミリー・ワトソン演じる盲目の女性と恋に落ちることで人の心を取り戻しつつあったダラハイドですが、最終的には自身の中に存在するレッドドラゴンから逃げることが出来ずにウィル・グレアム一家を襲い、ウィルとその奥さんによって射殺され死んでしまいます。

虐待によって生み出された悲しきモンスターという設定で、ダラハイドにも同情の気持ちが芽生える内容ですが、よくよく考えるといまいち犯人役ダラハイドが描き切れていない感がぬぐえません。
自身の中に存在する神・レッドドラゴン。これは「解離性同一性障害」的な、自分の中に存在するもう一人の存在的なものだと思いますが、そのレッドドラゴンから恋するエミリー・ワトソンを殺せと命じられます。今までレッドドラゴンに従って生きてきたダラハイドですが、彼女を殺すことはできないと、はじめてレッドドラゴンを拒絶することになります。
彼女に向けた銃口を自分に向けて自殺という選択をするのが後半のハイライト。実際に撃った映像は出ないんですけど、銃声と共に目の前にいるエミリー・ワトソンの顔に鮮血が飛び散る演出によって、観客もエミリー・ワトソンも、ダラハイドが自害したと思うわけです。実際に顔が砕け散った人間の死体が映り、盲目のエミリー・ワトソンもその亡骸に触れることでダラハイドが本当に死んだと思うわけなんですけど、実はその死体は直前にダラハイドが射殺した会社の同僚の死体でしたというオチ。
レッドドラゴンによる命令に背き、「俺には彼女を殺せない！」とか悲痛な叫びを上げながら、同僚の死体を事前に準備してあのタイミングで撃って自分は逃げたということです。ダラハイドの悲哀を最高潮に感じるシーンだっただけに、裏でそんな準備をしていたと考えると何だか興醒め。冷静に同僚の死体と入れ替わる準備をしていたダラハイドも、レッドドラゴンを拒絶しようとしたダラハイドもどちらも本物で、そうせざるをえないほどに虐待によって精神が犯されていたと考えることもできますけど、ちょっと厳しい気がします。どうしても実は生きていてウィル一家を襲うっていうクライマックスありきで作られた演出に思えてなりません。

それ以外にもダラハイドがどういう基準でターゲットとなる家族を選択していたのかもいまいちはっきりしないまま終わっちゃいます。個人的には全体的に脚本がいまひとつと感じました。

とはいえ、レクター博士のアンソニー・ホプキンスをはじめ、エドワード・ノートン、ハーヴェイ・カイテル、エミリー・ワトソンなど、主役級の俳優陣揃いで、それぞれ圧巻の演技を見せてくれるのでそれだけでも十分引き込まれ、楽しめる作品ではありますので、未見の方はチェックしてみてくださいね。